第1回「お見事な人」いとうせいこう

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塚本「スリーラバースに関わる『お見事な人』
そんな人達に対談形式で僕が質問しまっくて困らそうという企画。
その第1回目「お見事な人」が、いとうせいこうさん!!
宜しくお願い致します」

いとう「よろしくお願いします」

塚本「The Three Robbersに出会ったのは、いつぐらいですか?」

いとう「何年前かな~あれ?」

塚本「浅草進出したのが4年弱くらい前だと思うんですけど、、」

いとう「じゃあわりと早めに行ってるんじゃないかなあ。そのくらいだよ」

塚本「いとうさん来てくれた時はすごく嬉しかったんですよ。逆にいとうさん僕とか影山さんの第一印象覚えてます?」

いとう「塚本君は、『やたら詳しく生地の事とか喋る奴がいるなあ』 という印象だよね。そういう人あまりいなかったしさあ、服屋でもそんなにいないじゃん。
『コレいいですよ』とは言うけどさあ、どういう風に珍しいのかってことを、
いちいち言ってくれる人って、あまりいないから『おもしろいなあ』って思ったよ」
「影山さんは、しばらく見てたけど喋らなかったから、『どういう影の黒幕なのかなあ?』と思ったね。腰低いしさあ、店の人なのか出入りの人なのか分からなかったね」

塚本「(笑)」

いとう「とにかく、分からなかった」

塚本「まあ服を何度か接客させて頂いてるのですが、いとうさんから見てスリーラバースの服ってどうですか?」

いとう「かわいい服多いよね。男でもキュートに着られるものが多いから、わりと好みのものが揃ってたわけ。それで通うようになったんだよね。好きなラインだったんだよね」

塚本「自分達の中で、流行りとかではなく自分達が着たいものという感じで、モノを創り始めたんですけど、その中でいとうさんに気に入られたというのは、僕かなりみんなに自慢しましたよ~(笑)」

いとう「(笑)」


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塚本「いとうさんが浅草に住んでる事は有名で、よく聞かれる質問だとは思うのですが、なぜ浅草にお住まいなのでしょうか?」

いとう「東京が、どの街も同じになっちゃってるからさあ、
『唯一変わった街にいようとしてる』っていう所が意識が高いよね。
だからココにいると画一化しなくてすむから気持ちが助かる。
やっぱり街はそれぞれ違ってた方がいいに決まってるよね。
もちろん浅草も、だんだん店の並びとかチェーン店とか多くなってきて、
画一化されつつある感じもあるけど、
基本的には個人店舗が多くてというような商店の構成からしても、
やっぱり面白いよね」

塚本「大きい会社とか、チェーン店が入ってくるのはショックですか?」

いとう「『これだったら浅草じゃなくても、よくなっちゃうじゃん』っていう感じがあるんだよね。そこをちょっと憂えてますね。僕は」

塚本「それが人を集めるキッカケだったらOKですか?」

いとう「うん。それはしょうがないよね。全然ないっていうのもあり得ない話だから、いいんだけど。軒並みそうなっていくと、『浅草が死んじゃった』っていうのと同じだからさ」

塚本「いとうさんがオススメのスポットとかありますか?」

いとう「俺は浅草寺好きだからねえ。こんなゴミゴミしてるとこの真ん中に、あんだけ大きい空が広い所があるっていうのはすごい気持ちがいいことじゃないかなあと思う。夜中の浅草寺とか好きだよ」

塚本「そんな浅草の中に、無垢をはじめ洋服屋が増えることは浅草には合ってますか?」

いとう「うん。すごく良い事じゃないかな。っていうのは浅草は今、
若い人向けのモノが無くなっちゃってるから、、、
昔はいっぱいあったはずなんだけどね。
まあ若い人って言ってもティーンエイジャーじゃないんだけど、
ある程度の若者が自分達の生活楽しめるような店が出来てくれるのは、
すっごい浅草に必要だと僕はずっと思ってたから」

塚本「着物だけじゃなくて~」

いとう「そうそう。着物着てる人はどうせオシャレなんだから、
オシャレな服が売ってるトコがなきゃいけないのにそれがあんまり無かったっていうのはアンバランスだったと思うんだよね。
だからもっと、そういうトンガッタ店が出来てくれると
『バランスとしておもしろいなあ』って思いますね」

塚本「【服】という存在が人それぞれ違うと思うんですけど、いとうさんにとって服とはどのくらいの位置にあるものなのですか?」

いとう「ん~どうだろうなあ。嫌いではないよね。
例えば翌日の仕事の用意をする時に、まず『何を着て行くか』と決めて服を下げておく。そういう意味では、その日一日の気分を決めるモノだから、もの凄く大事なモノですよね。それが『どうも違うなあ』なんてモノ選んじゃうと一日中気分がすぐれないもんね」

塚本「人と人とが『はじめまして』なんて会う時、言葉交わす前に一番最初に入る情報って目からの情報だと思うんですよ。
という事は洋服って重要だと思うし、その人を決定ずけるモノだったりもすると思うんです。『あれ?何着てるのかな?』なんて興味の持たれ方も違うでしょうし、会話の膨らみ方も違ううのかなと。少しでもウチの服で、その手助けができればおもしろいかなと思うんです。」

いとう「いいねえ」

塚本「さらに『明日何を着て行くか』なんて時、ウチの服がリストにあがってたらうれしいですねよね」

いとう「あがってますよ。」

塚本「(笑)ありがとうございます」


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塚本「スリーラバース HPでも話は出てきてる『大人の遊び事』という計画を企んでますが、なぜ?」

いとう「なんかやっぱり、どうしてもこの歳になってくると『用意されててやる仕事』の方が多くなってきちゃうじゃない。そうすると、
『【自発的に、しかも最初は凄くアンダーグラウンドで、遊びみたいなんだけど真剣にやる】という事が必要じゃないかな 』となってきて、その時になんとなく、『アイゴンとやったら何かおもしろいんじゃないのかな』と思ったわけ。ワクワクする真剣な遊びみたいなモノが丁度ほしかったんだよね。それでスリーラバースに間に入ってもらって言ってみたらOKだったんだよね」

塚本「今、『アイゴン』と名前があがりましたが、會田さんの印象は?」

いとう「アイゴンは、とにかくミュージシャン界で5本の指に入る俺を笑わせてくれる人間だから(笑)」

塚本「(笑)」

いとう「彼は笑いのセンスがスゴイいいよね。っていうか3本指に入ってるね!!」

塚本「(笑)」

いとう「前から番組では一緒になってた事があって、その時からアイゴンが好きで。その時には、ちゃんと話せてなかったわけ。だからスリーラバースを介してお互いに、なんとなくメッセージとかやり取りしてるうちに『あっそうか。俺のアルバムとか聴いてくれてるんだ』とか『知らなかった。アイゴンもこっちを見てたのか』という感じ。おもしろいよね。」

塚本「すごく感じますね~
いとうさんはウチの店で會田さんのCD見て
『アイゴンだあ!』って言ってて」

いとう「そう。『なんでアイゴンのCDがあるのかな?』って思ったもん」

塚本「會田さんも、いとうさんに書いてもらった【福と福】の額縁見て『いとうさんだあ!!』って叫んでて2人して同じ様なこと言ってましたもん」

いとう「(笑)そうか~不思議だよね~」

塚本「そんな會田さんから質問を戴いております。
『Q .家ではテレビを観ますか?好きな番組とかあったら教えてください』
という事なのですが」

いとう「(笑)アイゴンは観るのかな?」

塚本「僕は會田さんと長いお付き合いさせて頂いてますが、テレビっ子だと思いますよ(笑)」

いとう「テレビっ子なんだ!そうなんだ!(笑)昔観なかったんだけど、この何年かはわりと観るね。観るというか何となく『どんなもんやってんだ』というチェックするのは好きなんだけど、まあ新しい形式の企画みたいなのがあると、いちおうチェックしてるよね。『どんなおもしろいことやってんだろう?』みたいな、職業的な意識で観てるかもしれない。
普通に好きな番組とかは、番組に関して詳しくはないんだけど『なんで俺、これ観ちゃうだろ~?』というモノがあって、それは何かっていうと、
釣りのシーンとかさ、漁師がアミで魚獲ったりするじゃん?
ああいう、【海から魚を獲る】っていうシーンに異常に引き付けられるんだよね、オレ。『なんでだろう』って思いながらも、必ず観ちゃうんだよね、そういうもんやってると。多分ね、【無から有が生まれてくる】みたいなもんじゃない、海の中は見えないわけだから。そのお得感が好きみたいだね、どうも。狩猟本能かもしれないけど、そういう場面やってると、どんな番組であれ観ちゃう」

塚本「あ~僕そのチェックができないんですよ。 いちを音楽やってまして、人の曲聴いて【アイディアもらう】とか【崩す】というのが、できないんです。すぐ影響されちゃって何もできないというか。。そういうのはありませんか?」

いとう「あるある。だから僕もあまり人の小説読まないもん。影響受けちゃうのが嫌だからね。あるよね」

塚本「僕、前に曲作ったら【スニーカーぶるーす】だったて事ありましたよ(笑)」

いとう「(笑)」

塚本「洋服も他の店に行かないのは、そこなのかも。刺激受けるのも嫌だし」

いとう「無意識に入っちゃうからね」

塚本「いとうさん、色々お仕事されてて、影響無しで【ゼロからココまで持ってく感】って大変ですよね」

いとう「まあ、影響はあるけど、それは俺が忘れっぽいからラッキーなんだよね。主要な点だけ覚えてるんだけど、『これはおもしろい』とかね。そこが功を奏してんじゃないかな」

塚本「話は會田さんに戻りますが、メッセージを戴いております」

『知らず知らずのうちに?!かなり影響を受けている気がします。
見習いたいのは眼力と行動力。尊敬してます。
ナウい感じで言うと【マジ リスペクト】...。』


いとう「嬉しいね~。アイゴンがそんなこと言ってくれるなんて」

塚本「そして第2回目「お見事な人」が、その會田さんなのですが、
いとうさんから質問とメッセージを戴けますか?」

いとう「はい。そうだなあ。
質問は
『限りなく静かな男なんだけど、凄い良いギャグを突発的に飛ばしたりするっていうそのキャラは人格形成上、誰に影響受けているのか?』
ってことを聞きたいなあ(笑)」

塚本「(笑)分かりました」

いとう「絶対、小さい頃、親戚の誰かに影響受けてると思うんだよ!!(笑)」

塚本「(笑)」

いとう「メッセージは
『僕はアイゴンのセンスが大好きだから、こんなトコで会えて本当に嬉しいです』

塚本「これから東京国際ファンタスティック映画祭を控えてますが、
これは何年目なのですか?」

いとう「4年目なんだよね」

塚本「こういう映画のお仕事をされてて『自分でメガホン取ろう』なんて思わないのですか?」

いとう「あ~監督はダメだね」

塚本「僕、いとうさんに監督やってほしんですけど!!
『なんでやらないのかな』『映画、撮ってほしいなあ』って思ってますよ」

いとう「うそっ~! 本当?!
すっごい集団仕切んなきゃいけないじゃん。で朝早いじゃん!!
だから『俺には向かないなあ』って思ってるんだよね」

塚本「(笑)朝早そうですけど」

いとう「朝早くないんだよ」

塚本「舞台があんだけ面白いじゃないですか!!あれの映画版みたいな!」

いとう「脚本は書けなくはないと思うけどね」

塚本「じゃあ『コレは挑戦したいなあ』というのは?」

いとう「なんだろうなあ、色んな事してきちゃったからね。
だから『自分が挑戦したい』というよりは、いつも待ってるのは、『凄く鋭いプロデューサーに会いたいなあ』というふうには思ってますね。
それで『こういう仕事やってみてよ』と、意外な事を言われて、自分では『えっ?』とは思うのだけど、やってみると『確かに自分に向いてる』みたいな。
そういう『自分が考えた範囲内じゃない事を言ってくれるプロデューサーが誰か、いればいいのになあ~』とは、ココ何年も思ってる」

塚本「じゃあ、新しい事は言ってくれる人がいれば、何でもやりたいですか?」

いとう「そうそう。なんか気づかせてほしいだよね、自分にね。
僕はプロデューサータイプに見えるもんだから、あまり人が、そういう声かけてこないわけ。『きっと、考えてるんだろうから』ということで。
だから『上手に使ってくれる人がいればいいのに』と思うね。『役に立つのに』みたいな。俺は相当役に立つ自信があるんだけどなあ(笑)」

塚本「今、いとうさんご自分の自己紹介は何と言うんですか?」

いとう「まあ、『物書きです』って言うのかな。
余芸じゃないんだけども、テレビの司会みたいな事があるっていう。
テレビの司会も、おもしろい番組ならドンドンやりたいと思ってるし、自分でしか仕切れない事もあるだろうと。そういうトコで使ってくれる人がいれば、大喜びで出て行っちゃうなあ」

塚本「以前【街ぐらし】とういう雑誌でも対談させて頂いたのですが、その時いとうさん『スリーラバースは色々な人が行き交う店、交差する場所であってほしい』と言ってくださったのですが、あの時から2年経ちましたがどうですかね?」
いとう「それは、なってんじゃないの?
だって実際、俺もココでアイゴンと繋がる事になったし。ワタナベイビーも浅草引っ越して来て、『何処連れってたら面白いかな~』と思って『あっそうだ!スリーラバース紹介しとこう』とかさ、そういう風に思える場所になってるわけだから、それはなってるんじゃない。
だから今後もそれを拡大、発展させて頂きたいよね」

塚本「ありがとうございます。
では最後にこの【見事な人と福と服】を見てくれてる方々に
お言葉を戴ければと」

いとう「とにかく、『ちょっと寄って軽く喋って行きたくなる店だから、 是非あなたもお立ち寄りください』っていうのが第一なんだけど、
そういう意味では、ちょっと飲み屋に近いとこあるんだろうね(笑)
『あの店寄って、ちょっと愚痴言って帰ろう』みたいな、そういうトコあるよね。そんな服屋はあんま無いんじゃないの(笑)」


塚本「(笑)ありがとうございます。
という訳で色々お話できて楽しかったです。
今日はお忙しい中、ありがとうざいました!!!!」

いとう「ありがとうございました!」


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by 3robbers | 2001-05-01 00:01 | omigoto